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妖精辞典
<妖 精>
【エティアイネン】ラップランドの俗信。語源もラップ語。宙を漂う不可視のユウレイで、家に何かが起こりそうなとき、家の人々に変異を事前に知らせてくれる。
【ケイユ】妖精。小さく可愛らしい人間の姿で、背に薄い羽を持ち、飛翔する。言葉を繋げて、それぞれの精を表現する、例えば「花の精」はクッカケイユ、つまりクッカ(花)+ケイユ(妖精)。
【セイタ】サーメ語。ラップ人が崇拝する古い巨石や岩、あるいは人間の姿に刳り抜かれた樹木など。
【トンットゥ】こびと(但し、「こびと」は最近では差別語とされているので、トンットゥの語をそのまま使いましょう)。長い顎髭をもち痩せた老人の姿が多い。クリスマスのサンタ・クロースの手伝いをするのが、ヨウル・トンットゥ(ヨウルはクリスマスのこと)コティ・トンットゥは、家(コティ)に住みつくトンットゥで、日本民話の座敷童や屋敷童に似ている。
【ネイト】ニンフ。ケイユより大きい妖精で一般に美しい。ヴェデンネイトは水(ヴェシ)のニンフ。メトゥサンネイトは、森(メトゥサ)のニンフ。
【ノイダ】またはノイタ。白雪姫の魔女のような悪。魔女。スゥオノイダは、沼(スゥオ)に棲む魔もの、妖怪。多く女。
【ハルティヤ】精霊、善。特定の場所に居て、そこに起こる出来事を手引きしたり、しっかり観ている。スゥオンハルティヤは、沼(スゥオ)に棲む精霊。日本のカッパは、「かわ・わっぱ」(河童)が変化した用語で、それに習い、「沼童」あるいは「沼んど」と言ってもよいくらいである。山(トゥントゥリ)にいるのは、トゥントゥリンハルティヤ 「山彦」。オーロラの精は、レヴォントゥリ・ハルティヤで、「オーロラ仙女」と呼んではいかがでしょうか。オーロラの精のハミングやスキャットの歌声が、天空に美しく響きます。サウナに棲むと信じられているのが、サウナハルティヤ。座敷童をもじって「サウナ童」とでも。
【ペイッコ】トロッルと同義。地下や洞穴に住む北欧伝説の巨人あるいは 小人。長い髭を持ち、体毛がある場合も。
【ヘンキ】精、霊魂。ハッランヘンキは、霜の精。
【マァヒネン】緑のこびと。男女。長い緑翠色の髪をもち、顔も緑色で皺しわ。長い爪をしている。こわい容貌。よく見るのが地面にしゃがむようにしている姿。「地老仙」とでも言えば分かるような気がしませんか。マァヒスウッコは男。
【ムルク】黒か茶色で、子どもは怖れる。怖いもの。嫌なもの。お化け。「ムーミン」に登場するモランがこれ。
【メンニンカイネン】マァヒネンより、大きく重い。熊のような風貌で、よく歌う。「地入道」とでも言いましょうか。
【ヴィルヴァトゥリ】鬼火。狐火。トンットゥ(こびと)が操る場合もある。
【ヴェルホ】魔法使い。魔女。
< 類 ・ 蘚 類> 森や妖精物語に欠かせないのが苔類です。
【カアパ】棚キノコ、サルノコシカケのようなものを想像しましょう。
【カルフンサンマル】クマゴケ。丈30センチ位の柔らかい草のような苔。寝そべると気持ちが良い。妖精物語の重要な舞台装置です。
【カルパスシエニ】ハラタケ類の茸。カルパネンに同じ、赤い毒キノコで、白斑がある。
【サンマル】ふつうに苔。
【シエニ】ふつうに茸。マッシュルーム。
【ナアヴァ】蘚苔類。トウヒに生える灰緑色の苔。樹木の幹のあちこちに長い髪の毛のように生える。ヒゲ苔。妖精はこの苔で服地を作る。日本では四国に見られるサルオガセが似ている。
妖精物語の重要な舞台装置です。
【ヤカラ】地上に生える灰色の苔。冬季、トナカイの貴重な食糧。雪の中、この苔を求めて、伐採された木の切り株に足をとられ、怪我をするトナカイが後を絶たない。自然に対する人間の身勝手は許されません。妖精物語の重要な舞台装置です。ペイッコの棲息地にヤカラが生えています(『天使は森へ消えた』サンマーク出版参照)。
【ラフカスオ】ピート・モス、腐葉土。
【レフティヤ】藪に育つヤカラの類でフィンランドには二千種以上ある。
<植 物 ・ 花>
【カイスリッコ】イグサ、灯心草。
【カタヤ】ジュニパー。湖の周辺に生い茂る低潅木。クリスマスにはモミの木の代わりに使われ、家の中を良い香りにしてくれる。民間薬療法や、蒸留酒ジンの香り付けに使用される。
【カネルヴァ】エリカ。ヒースとも呼ばれる。民間薬療法やハーブ・ティーにされる。
【カルパロ】プオルッカに同じ。ツルコケモモ、クランベリー。フィンランドの国民的叙事詩『カレワラ』でマルヤッタがツルコケモモの実を食べて妊娠、出産しました。
【クウサモ】スイカズラ科。ハニーサクル。ニオイエンドウ。民間薬療法に使用。花言葉は、愛の絆。
【ケトゥンレイパ】スイバ、ギシギシ、カタバミ
【サナンヤルカ】シダ、ワラビ。『森の木翳で』に「シダの花が咲く」とある。イギリスの俗信に、シダは夏至の前夜に青い小さな花を開いてすぐに種子を作り、真夜中にそれを地上に落とすという。この種子は金色ないし橙色をしており、これを三粒入手できれば、どんな動物をも自由に使役でき、身に着ければ、透明な体になれるという。
【サニアイネン】シダ類。
【ナレ】若いトウヒ。
【ニィットゥヴィッラ】綿草。
【パユペンサイネン】ヤブヤナギ。柳(パユ)+藪(ペンサイネン)
【プオルッカ】クランベリー。ツルコケモモ。【カルパロ】参照。
【ピゥストゥホンカ】まっすぐな赤松。
【マァリアンカンメッカ】草丈 10-20センチの多年草。花は、明るい青赤色。野生ラン。湿った森の地面一面に、七弁のアネモネ(ヴァルコヴオッコ)のような花を咲かせることも。
【マントゥ】ふつうに松。松ヤニ石鹸は、良い香りで汚れも良く落ち、自然にやさしい。
【ムスティッカ】ブルーベリー。
【メッサタフティ】字義は「森の星」。白い花。
【ライタ】柳の類。
【ラタモ】オオバコ。
【リエッコ】柳の類。
【リエコンマルヨ】ヤナギライチョウの実。
【レントゥッカ】リュウキンカ。湿地に生え、黄色い花が咲く。
【ユオルッカ】沼地に育つコケモモ属の一種。莓に似た青い花を咲かせる。
【ヴァナモ】スイカズラ科リンネーア属。リンネーアの細い常緑の匍匐植物、糸状の花柄に桃色または赤紫の花が対をなして咲く。ヨーロッパ産のリンネソウと、アメリカ産がある。補足:リンネソウは、地上を這うが花をつける枝は立ち上がり、高さ5〜7cm。葉は対生し卵円形。長さ4〜12 cmの花茎の先に2個ずつつき、夏に咲く。花冠は筒状鐘形、長さ7〜9mm、白く下向きにつく。果実は球形だが、日本では種子はできない。北半球の寒帯や高山に分布。氷河時代の残存植物のひとつ。山草として栽培。ロック・ガーデン栽植。(平凡社世界百科事典)
<鳥>
【クウッケリ】赤みを帯びた茶灰色の綺麗な色合いの鳥。体長30センチくらい。クウサモやラップランドの針葉樹林帯に生息する。
【コルッピ】青い線状の模様が入った黒ワシ。体長70センチくらい。フィンランド全国に生息し、雑食性。
〈サルヴィポッロ〉物知りのフクロウ。
【ソトカ】アヒルの類。フィンランドでは通常3種類が営巣。ウズラガモ。
【タイヴァアンヴオヒ】渉禽類 (サギやシギのように水辺を歩く鳥の仲間)。歩く様子はヒョウタンやカボチャを思わせる。ヨーロッパ、北アジア、中央アジア、あるいはアフリカやインドに生息。フィンランドでは全国で見られる。春になると雄は尾羽 が彩られ、グァグァ喧しい鳴き声をあげる。「ひょうたん鴫」という感じ。
【タリティンッティ、タリティアイネン】四十雀と同 じ。頬は白く、黒い頭部より灰緑色がかり、尾は黄の地に黒班入り。広葉樹林帯に多く、たいてい越冬する。年に二回移動。ツツピー、ツツピーと鳴く。
【ティッカ】啄木鳥。
【ハンヒ】ガチョウ
【ヘルミポッロ】暗褐色あるいはこげ茶色の入った白フクロウ。ひじょうに小さい。森に生息。ヘルミは、二月あるいは真珠の意味。
【ヘンヒ】野生の雁。
【ヤンカリントゥ】北フィンランドに生息する小型の渉禽類。
【ヨウツセン】白鳥。フィンランド神話では、トゥオネラ(黄泉の国)から河川を渡って人に逢いに来ると信じられている。
【リエッコ】ライチョウ
<動 物>
【シイリ】マーモット。
【ナァリ】北極狐。
【パアスタイネン】スナネズミより小さく、黒茶色のネズミを思わせる動物。鼻先が普通のネズミより尖っている。昆虫や芋虫を食べ、ほとんど一年中動き回る。フィンランドには五種類いる。日本のヤマネやオコジョを思い浮かべるが、ヤマネは冬眠し、オコジョはずっと大きい。ナキネズミと言えば感じがでるでしょうか。妖精物語によく登場する重要な動物。
【ヒイルライネン】小さなネズミ。
<虫>
【キィルトマト】光り虫。シッポの方で銀色の冷光を放つ。蛍とちがって飛ばず、青虫のように木の枝を這う。「ムーミン」に登場するニョロニョロは、これがモデル。フィンランド人は、キィルトマトは日本にもいるという。2001年12月29日付朝日新聞によると、広島県中部の山間で、光るミミズが見つかった。「ホタルミミズ」という名称で、体から発光物質を含む液を分泌して光る。体長は成体でも3センチ程。月明かりがあると見えにくいほどの僅かな光。学名をミクロスコレックス・ホスホレウスといい、ホーロッパやキタアメリカなどで報告されている。日本でも1934年以降にいくつか記録がある。
<その他の語彙>
【クルタヒップ】砂金。ラップランドの小川で、砂金が採れる。砂金採りの観光ツアーがあり、採った砂金で指輪を作ってくれる。
【ヌトゥッカ】つま先の反り上がったラップ特有の履き物。トナカイの毛皮で作る。
【ラアヴ】木の枝等で作る円錐型のラップの小屋で移動に適する、外に焚き火を焚いて眠る。
<フィンランドの山々>
【アアパヤンカ】北フィンランドや中央フィンランドの湖沼地帯に始まる弓状の山、丘陵。
【トゥントゥリ】この妖精物語では、しばしば「丸山」とした。丸みを帯びて見える高い山で、フィンランド北方に特徴的な山。サンタクロースが住むのもこうした山である。
【ヴァルシ】山。トゥントゥリより、むしろ日本の山に似た感じの山。
【ヴゥオリ】丘。丘陵。

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