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14 友の援け

 森を抜けて流れる小川が、眩しい夏の日のなかをさらさらと楽しそうに行く。小川の初めは、深い地下、クリスタルのように煌めく湧水が、ぶくぶく絶え間なく上に湧きだしていた。森の小径と、小川の土手、沼や湖の岸辺、そして森の原っぱに、花が美しく輝く。ワスレナグサ、青シャジン、日々草、森の星、スミレ、キンポウゲ、青花の木、スイバ、雪シャジン、ワタクサ、リンネソウ、アイリス、スズラン、他にも多数の花々が、太陽に顔を上げ、日光がくれる力と暖かさ、しっとり湿った土の栄養を吸収している。他の木も草もみな同じ。そして森の小さいものたちも食べ物を探していた。それは、長い冬に備えて食べ物をたくさん集め、倉庫を一杯にするため。そんなふうに、親たちは子どもを連れ、もう朝早くから仕事に出かけてしまった。リスのネストリは、もうずいぶん年よりの爺さんだが、ナップサックを背負い、自分と妻のために冬の蓄えを探していた。ひっそり歩き、背中がとても疲れると、しばしば藪の茂みにしゃがみ、杖を支えにして休む。そのうえネストリはまだ膝が少し痛む。傷口に、尖った枯れ枝が触れたりすると。
 家では今、老妻リスのカロリィナが、松ヤニの用意がすぐできるよう、大きなオオバコの葉に包みクモの糸で被って作ったクスリの包みを、あるべきところに置いたりしていた。ネストリは、膝にまだ包帯をして、動けばびっこを引くらしく、ピョンピョン跳ねていたのは昔の話し、前屈みのそろり歩きで満足していた。辛抱して、冬の食べものを探した、他のリスたちのように。
 「カロリィナが、今いっしょに居てくれたらいいなぁ。いっしょに歩いたらハイキングみたいで楽しいのだが。しかしおまえはどうしたのだろう、朝から頭が痛くて休んでいるしかないもんな」ネストリはひとりごとを言い、しばらく草むらに坐りこんだ。折良くそばを通りかかった家族が、ネストリが困っているのに気がついた。家族は、爺さんリスを助けることに決め、ネストリが家へ持って帰れるように、拾い集めた森の幸を分けてあげた。
 それには、どんなに驚き、喜んだことだろう!ほとんどことばにならないくらい、涙がでるほど嬉しかった。それというのも、ネストリは、誰かにこんなに援けてもらえるなんて期待も望みもしていなかったから。これまでこんなこと、必要だとはいえ、あったためしがなかったから。その頃は森のあちら側に住んでいて、そこは、この森のように、こんなに親切なものがいなかった。
 あげたいものがそれぞれに自分の分をわけたので、リスのネストリは、ナップサックがはちきれそうに一杯になっていることに気づいたが、それでもまだ次々と贈物のカゴがそばに置かれた。それで、ネストリは、心暖かな森のものたちに、恭しく礼を述べることしかできなくて、けれども嬉しい足どりで、家の巣穴に帰って行った。援けをしようという友が二、三匹、付き添って行ったことは言うまでもない。


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