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12  こびとのトピの困った状況

 
 冬の森。樹々は氷の真珠のベールをつけ、白銀の雪に包まれた樹氷原は、まるで結婚式を祝っているようだ。
 一月は、冷たい凍える夜が来る。オーロラが変化し、白霜の真珠が硬雪にきらきら光る。満月の時。月の光でキツネたちが踊っていた。青白い氷のような月光が樹々を照らし、凍てついた硬雪に、暗い影を描いた。森のように毛むくじゃらのペイッコの絵姿、怖ろしげな物の怪の影絵。トウヒの枝はピクリとも動かず、森はぞっとするほど深い眠りについていた。それでも近くで真珠フクロウがホーホーと星に鳴き、ウサギが巣穴をめざして忙しなく跳びはねる。
 しかしフクロウは、いったいぜんたい何に気づいたというのだろう?厚いトウヒの下、深々と積もった雪の中に森のこびとのトピが座り、凍える夜の闇を身じろぎもせず見つめている。ローソクの光が頬を照らし、あごひげが震え、こびとのトピが泣いているのはあきらかだ。
 トウヒの上の巣からフクロウが、こびとのそばに舞い降りてたずねた。
 「今頃、そんな寒いところに座って涙で目を濡らしているとは、いったいどうした。こびとに何か起きたのか?」「わからない。一日留守にしていた。私はなんて不幸だろう!こびと村に帰る道が見つからない。吹雪が一日吹きあれて小径が深雪に埋もれてしまった。家から姪のところへ行っているまに、私の道が深雪に消えてしまった。どうしようもない。私は何処へ行けばよいのだろう」こびとは寒さに凍え、言葉をつまらせた。
トピ
トピ
 「悲しむことはない、友よ!私の背に座りなさい。すぐにあなたをこびと村へ運んであげよう。お気の毒だし、夜更けだし、そこへの道を知っているから」フクロウは、慰めるように言った。
 そうしてこびとのトピは悲しむのをやめ、安全にこびと村へ戻った。
 フクロウは森に住むものたちの見張り番。目敏く賢い助っとだ。
 人間よ、あなたも、自然を援けて守ってほしい。森に住むたくさんのものたちの住処がある。皆、あなたの友だちだ。


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